ヒリダスの余分ログ

よぶんこそじぶん。などと思ってみたり、みなかったり。

20170625 喫茶H

「行きつけ」というと、ちょっと感覚が違うかもしれない。
「頼りにしている」喫茶店がある。


どこへ行っても人が多くて疲れてしまったとき。
「ここなら、ゆっくり過ごせるはず」という思いで、
そのお店を訪れる。


静かで落ち着いた時間が流れる店内。
いつも、隅っこの二人掛けの席に座る。


人当たりのやわらかい老夫婦が営むこのお店。
見るからに若造な我々夫婦にも丁寧な言葉使いで接してくれるご主人と
明るい笑顔でお冷やをこまめに継ぎ足しにきてくれる奥様。


注文が入ってから豆を計量し、丁寧に淹れてくれるスタイルと、
珈琲を注ぐカップを客自身が選べるという心遣いがうれしい。


常連さんらしき人と話し込んでいる姿を見たことはあるが、
私や妻のように、静かな時間を楽しみたい人には、
無理に声をかけず「ごゆっくりどうぞ」とそっとしておいてくれる。
そういったさじ加減が絶妙だ。
以前、ちょっと声のボリュームが大きめのマダム集団が店内に居合わせたときは、
「今日はちょっと騒がしくてすみません」と言って、気にかけてくれた。


そのちょっとした気配りひとつひとつが、
珈琲の味や、この場所に流れるやさしい雰囲気に表れている気がする。
このお店、このご夫婦を、勝手ながらの人生のお手本のひとつにしている。


運ばれてくる器や、壁に飾られた一輪挿しが可愛らしい。
ここにくると、いつも眠くなる。
多幸感という毛布にくるまれているような感覚に陥る。
眠りこけてお店に迷惑をかけてしまう前に、
程良い滞在時間で、お会計を済ませねば。

 

「ごちそうさまでした」
「またどうぞよろしくおねがいします」
いつも変わらないやりとりに、
胸が晴れるような気持ちになりながら、店を後にした。